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プシュ。
俺が缶ジュースを開けて飲むと 彼女も同じようにしてジュースを飲んだ。
彼女が動くたびに ふわっと香ってくるいい匂いが 俺の鼻先をくすぐる。
小さなテーブルを挟んだ向かいに座る彼女の顔を 俺はジッと見た。
すぐにその視線に気づいた彼女は 俺の顔を見返した。
『名前は?』
『………』
言いたくないのかよ…。
なら、いいよ。
ただなんとなく訊いてみただけだし。
俺は缶ジュースをゴクゴクと飲み干した。
『…紗那(さな)。』
小さく呟くように 彼女は言った。
『俺は 聡(さとる)。』
訊かれてないけど…。
なんとなく、言いたかったんだ…。
いつの間にか、俺の狭い部屋は紗那の匂いでいっぱいになっていた。
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