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土曜日 PM9:00
コンビニのバイトが終わってから 俺はいつもの場所に向かった。
寂れた商店街のアーケードをくぐり いつもの空き店舗の前に座り込んだ俺は アコースティックギターを取り出した。
ポロン…
ポロロロン…
俺は 歌は唄わない。
ただ弾きたいだけなんだ。
流行りの曲を弾いたり、なんとなく自分で作った曲を弾いてみたり。
その日の気分で 気まぐれに決める。
どうせ誰も聴いてやしない。
じゃあどうしてこんなところで弾いてるのかって?
それは…
家じゃ弾けないからさ。
家賃3万円のボロアパートじゃ 弾きたくても、弾けないからさ。
どうせ誰も聴いてやしない…。
ポロロン…
あ…。
俺はほんの一瞬だけ そっちを見て またすぐに視線を戻した。
顔色ひとつ変えずに ギターを弾き続ける俺だけど…。
本当は手が震えてしまいそうなくらい 緊張していた。
反対側のシャッターが閉まった店舗の前で、今日もあのコが聴いてたんだ。
たぶん…。
俺のギターを 聴いてくれてるんだ。
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