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鍵を開けて 俺はいつものように部屋に入った。 彼女は… 玄関に突っ立ったままだった。 ここまで来ておいて やっぱりやめとくとか、そういう展開? それならそれで構わないさ。 誘ったのは俺じゃない。 ギターを教えてくれって言ったのは 彼女の方なんだから。 嫌ならやめればいい。 『…お邪魔します。』 彼女は… 黒いエナメルのパンプスを脱いだ。 部屋に入った彼女は 遠慮がちに部屋を見回した。 よかった…。 今朝 部屋を片付けておいて。 俺は冷蔵庫から缶ジュースを2本取り出し小さなテーブルの上に置いた。 これといって何も置いていない四畳半の部屋は 片付けたことによって更に殺風景になり… まるで俺が張り切って片付けたみたいになってはいないか? やっぱり 片付けたりしなきゃよかった…。 そんな俺の気持ちなど まったく知る由もない彼女は 畳の上にちょこんと座った。 やばい…。 することがいちいち可愛すぎる。 俺は必死に煩悩をかき消した。  
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