とある回想~opening

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とある回想~opening

 ――出会いは、高校に入学してからまだ数週間しか経っていない時だったと思う。  イラついたんだ。だから、仕方ない。そう自分に言い聞かせて僕は、暗くなり始めた放課後の校舎で、見るからに不良な生徒達と早くもイジメられっ子に仕立てあげられた女の子の間に割って入った。  怖かった。いや、不良生徒達が、では無く、もっと別の物が、怖かった。でももう割って入ってしまったから、今更引き下がれない。  勿論、不良生徒達は僕を色々な言葉で罵倒してきた。その内容は今ではよく覚えてないけど、罵倒の中に「正義の味方気取ってんじゃねぇよ」みたいなのがあったのは覚えてる。  僕が恐れていた言葉だった。僕は、正義の味方になんか、なりたくないから。  だから、なんて言い訳はしない。元々喧嘩が強くなかった僕は、結局イジメを止められずに、不良生徒達にサンドバックにされていた。  やっぱり僕は、中途半端で駄目な人間なんだな、と実感する。  正義の味方になんてなりたくないのに、変な動機で正義の味方みたいな事をしたから、こんな事になったのだ、と、身体も意志も弱い自分に嫌気がさした。  ――それを打ち壊した奴が居た。  絶望すんにはまだはえぇんじゃねぇか、みたいな事を言外に言われた気がして、僕は食い入るように、不良生徒達を素手で殴り倒す、乱入者の姿を見ていた。  全てが終わってから、一部始終を見ていたらしいそいつは僕に言った。 「力も無いやつが、ヒーローごっこなんざしてんじゃねぇよ」  と。  他にも色々言われたが、まとめるとそんな感じだった。  それに僕は、言ったんだ。精一杯の強がりを込めて、最大限の本音を。 「そうだよ、力の無い僕は、ヒーローにはなれない。なりたいとも思わない」  立ち上がり、殴られた頬の血を拭って、 「それでも、ムカつくやつらはムカつくんだ。殴ってやりたいんだ。――だから僕は、悪者になってやる」  支離滅裂だった自覚は、ある。でも、ニュアンスは伝わったらしく、そいつはあろう事か、笑いやがった。  これが、奴との出会いだった。
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