第四章

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信号が青に変わって、人々が一斉に動きだす。 私たちは足を動かすことが出来ず、周りの人たちは私たちを避けて歩き出し、とたんに人混みに埋もれた。 喧騒が遠く聞こえて、まるで私たちだけの世界のような感覚に陥る。 「……うん、それは薄々気付いてたよ」 「あっ、あー…、そうなんだ」 薄々どころかめちゃくちゃ気付いてたけど。 宏平は「そりゃそうだよな」と苦笑いを浮かべながら独り言のようにぽつりと言って、足を進めようと促した。 「…………」 どうして、そんな顔するんだろう。
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