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「ごめん柚季、少し遅れ……え?」
待ち合わせ場所には、柚季の姿はなかった。
「…柚季が来てない?」
…いや、待った。
もしかしたらいつかの時みたく俺を驚かせようと、どこかに隠れているんじゃ…?
柚季は大人しそうに見えて実はいたずら好きだ。
昔はよく柚季に驚かされていた。
「…いないな」
柚季が隠れられそうなところを探してみたが、そのどこにも柚季を見つけることは出来なかった。
「柚季……」
待ち合わせ場所にその人物がいない。普通の人間ならそこまで心配はしないだろう。
だけど柚季の場合は違う。
嵐だろうが大雪だろうが関係なく、この場所でいつも俺を待っていた。
その柚季が先にいないのだ。
まさか事故にでも巻き込まれたのかもしれない。
ぶんぶんと頭を振る。
この桑亟村では滅多に事故なんて起きない、事故とは無縁の村だ。
事故に巻き込まれる確率はゼロとまではいかないが、相当に低い。
…なら寝坊とか。
体調が悪くて起きられなかった…そうだ、きっとそうに違いない。
「…家に行ってみよう」
柚季の家へ行けば分かることだ。
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