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待ち合わせ場所の雑木林には二つの別れ道があり、右に曲がると学校へ、左に曲がると柚季の家へ行くことが出来る。
左の道を暫く進むと見えてきた一軒の家。あれが柚季の家だ。
周りは森に囲まれ、近くに他の民家は一つもない。
ただ静かに、ひっそりと柚季の家は建っていた。
「…………」
表札の前に立ち、インターホンを押す。
ピンポーンと聞き慣れた音が鳴る。
…数秒待ってみたが、全く反応がない。
もう一度インターホンを押す。
「…………」
やはり反応はない。
…もしかしたら倒れているのかもしれない。それならインターホンに応えられないのも納得出来る。
「柚…!」
ドアに手を掛けた瞬間、郵便受けに何かが貼られていることに気付き、動きを止めた。
「…紙?」
紙には“用事があるから先に学校行きます。ごめんなさい。 柚季”と書いてあった。
「用事…」
柚季が待ち合わせ場所にいなかった理由は“用事”とやらのせいか…。
けれど…なんだ、この釈然としない感じは…。
「…学校行こう」
ともかく、もうここにいる理由はなくなった。
俺はもと来た道を引き返した。
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