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「?」
一体何がつまらないのか分からず、俺は首を傾げる。
…まぁいいか、佐原だし。
それよりそろそろ登校時間が危ない。
柚季の家に行ったりと少し寄り道をしたからな…。
俺は歩く速度を上げた。
「…でだ。その…お、お前と瀬川さんは本当に付き合ってないんだよな? だ、だったら俺と瀬川さんの仲を取り持ってくれよ! なっ! 頼む! このとおり! …あ、報酬か? ち、仕方ないな…ほら、弁当のおにぎり一つやるから…」
後ろで佐原が何か一人で言っているみたいだったが、俺は構わず学校へと向かった。
「……あれ?」
すると下駄箱で柚季の後ろ姿を見かけた。
「柚季」
声を掛けると、柚季はびくりと肩を震わせ振り返った。
「…翔くん」
あの手紙には“用事があるから先に学校へ行く”と書いてあったのに、なんで柚季は下駄箱なんかにいるんだ…?
それに鞄も持っている。
誰がどう見ても今登校してきたようにしか見えない。
「…柚季」
「なぁに?」
「その…用事ってなんだったんだ?」
柚季はにこりと微笑み、答えた。
「それはもう終わったの」
ひんやりとした空気が俺たちの間に流れる。
俺には、柚季がそれ以上この話はしたくないと言っているように感じてならなかった。
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