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教師は教科書の内容を朗読し、生徒は黙々と黒板の文字を書き写す。
聞こえてくるのは忙しなく動くシャーペンの音と、開けられた窓から時折吹く風の音だけ。
「…………」
あんなことがあった後だからか、俺はどうしても勉強をする気にはなれず、ぼうっと黒板を見つめていた。
「…………」
俺から言わせてみれば、この光景のほうが異様だった。
よくあんなことがあった後で勉強なんて出来る…。
岩田が気にならないのか、それともどうでもいいのか…そのどちらにせよ、教室の皆は相当な図太い神経の持ち主だということには変わりない。
「…?」
左腕に違和感を感じ、そちらに顔を向けると、隣の席の女子が人差し指で俺の左腕を突いていた。
そして小さく折り畳まれた紙を俺の机の上にそっと置く。
「……えぇっと…」
まさかとは思うが、ゴミ箱と間違えられているのか、俺の机は。
「それ、椎名くんへの手紙だよ」
困惑している俺を見兼ねて、隣の女子は小声で話し掛けてきた。
「…俺に、手紙?」
一体誰から…。
不思議に思いながら紙を開いてみると、そこには小さな文字で中心に“気になる?”とだけ書いてあった。
「………!」
この字は……。
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