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「…………」
今朝に限って目覚ましが鳴るより早く起きしてしまった。
しかも目覚めはこれでもかというほどに最悪。
こんな気分になるということは、間違いなく嫌な夢でも見たんだろう。
「……?」
けれどおかしなことに、夢の内容がなかなか思い出せない。
ついさっきまで見ていた夢…それも嫌な夢だと言うのに、その夢が何だったのか思い出せずにもやもやする。
「…起きよう」
夢のことは後で考えるとして、まずはベットから出るとしよう。
ハンガーのもとまで歩いていくと、俺はまだ少しぼうっとする寝起きの頭で制服に着替え始めた。
「…さてと、学校行くかな」
着替え終わった俺は朝食も食べずに玄関まで直行する。
両親は俺が七歳の時に交通事故で亡くなった。
それからというものの、俺はこの広い家にずっと一人で暮らしている。
最初の頃は寂しくて寂しくて、この家に一人で居ることが苦痛でならなかった。
『…ねぇ、泣かないで?』
だけど、今はもう一人じゃない。
・・・
あの時から俺は一人じゃなくなった。
「…………」
靴箱棚の上には、幸せそうに笑っている父さんと母さんの写真立てが置いてある。
「…行ってきます」
二人に向かって呟くと、俺は家を出た。
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