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「本当は柚季ちゃんと恋仲なんでしょう?」
驚きすぎて開いた口が塞がらない。
何を言い出すかと思えば俺と柚季が恋人同士だって…!?
「ち、違っ…!」
“誤解だ”
そう口にしようとした時、周囲からざわめく声が聞こえてきた。
辺りを見回してみるといつの間にこんな人数が集まったのか、かなりの数の村人が俺たちに注目していた。
「……っ」
頭の中に一瞬、流れた映像。
『ねぇ奥さん知ってます? 翔くんって実は…』
『ふふ、勿論知ってるわぁ。柚季ちゃんが好きなんでしょう?』
『おう知ってるか? なんでも椎名んとこの坊主は柚季ちゃんに恋心抱いとるみたいだってさ』
『かーっ! 坊主もやる時はやるねぇ! 青春じゃねぇか!』
誰も彼もが、俺が柚季を好きなことを知っている。
そんな村の光景に顔面蒼白になった。
…お、恐ろしい。恐ろしすぎる。
それだけは絶対に阻止しなければいけない。
「…行ってきます!」
俺はおばさんに背を向けると、一目散に逃げ出した。
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