初めまして大胆不敵

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 公立中学での普通の中学校生活、並々ならぬ努力で私立麓宮(ろくみや)高校に入ってから、2度目の桜の季節。学校自体には慣れたものの、新しいクラスに入り、後輩が出来るとなると、体がむずむずする。 「時田、おはよ。今年度もよろしくお願いしますよ」  クラス分けで今年も同じクラスになったサクに声をかけられる。 「任せろ、よろしくされる」 「おうよ。ダメだ、俺……新しいクラスに馴染めずに早くもくじけそう。時田がいなかったらどうなっていたことか。さっきから、手汗ヤベえの」 「お前の手汗がヤベえのは転校生がきてボーイズラブ的展開に期待しているからだろ」 「あ、バレた?」  サクは下駄箱から靴を取り出さない。 「時田くんさあ、ちょっとだけHRに遅刻して、転校生を見に行く勇者にならない?」  サクは二次元の、小説の中の転校生のような、問題児を期待しているらしい。  BL小説には王道と言われる展開があり、うちみたいな外界と閉鎖された男子校にやってくる転校生は、その王道とやらに当てはまるのだ。  諸事情で不細工に変装する転校生、腹黒い副会長との遭遇、なんやかんやでキスしたり、殴ったり。  そんなバイオレンスな展開が、サクの男同士の美しい恋愛を見る心……腐男子心を刺激しているのだ。  あ、俺もね。
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