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「学食から出た後?副会長が俺のこと捕まえようとしたんだけど、知らない生徒が助けてくれたんだ!今日の放課後に体育館裏に来いってさ!きっと副会長を倒すための作戦会議だぜ!」
「知らない生徒は十中八九副会長の親衛隊で、行ったら、副会長に近づいた罪で親衛隊の雇った体育会系に掘られるぞ?」
「え、あいつら悪いやつなの!?」
サクと菜月が何か言ってる。
王道?
もういいです、懲りました。二次元を実写化しちゃいけない。俺が間違ってました。
「時田、元気出せよー」
机に顔を伏せたままの俺に、津田が声をかける。担任が来れば嫌でも顔を上げるさ、それまでは感傷に浸らせてくれ。
昨日、学食で、会計に、キッスされた。中々上手かった。
菜月の王道イベントはぶっ壊されるし、親衛隊はぎゃんぎゃんうるせえ、サクは発狂して、何故か会長に慰められた。
悲しみにくれた僕は、カラーチョークを洗い流し、そのままちょっと遠出した下北沢の美容院で本当に髪の毛を真っ青に染めてしまいました。その青は、悲しみの青。
「この恨み晴らさずにおくべきか」
素早く顔を上げると、サクが驚く。
「もう復活?」
「だって俺、お父さんとお母さんのほっぺにチューしたことあるし、犬とも猫ともチューしたし、今更、男とキッスしたところで、あの会計ぶっ殺す!!」
どうしてやろうか。
爪を剥がしてやろうか。
それは見たくないか。
会計の弱みを握って、それをいいことにあんなことやこんなことをしてやろうか……。
それじゃただの変態だ。
担任が教室に入ってきた。
「時田、号令」
「え、なんで俺なんスか」
「お前、声でかいだろ。号令」
のっそほ!!
の、件を覚えていらっしゃる……。
起立と礼と着席。
「今日は委員と係を決める。学級委員は時田で」
「異議あり、担任。俺は別の委員会に入る予定なので、やりたくないです」
「なんだ、適任なのにな」
声のデカさなら菜月やサクだって負けてない。俺の職は1年の時から1択だ。
「美化委員予約で」
美化委員。
多分、委員会の中なら一番楽だ。校内の秩序を守る風紀、文化祭前からクソ忙しい文実(文化祭実行)に比べると、美化委員は地味だ。保健委員には、やや仲間意識を持っている。
「予約なし。先ずは学級委員からだ。やりたいやついるか?」
担任は学級委員に進行係を任せるつもりで言っているな。
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