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麓宮高校は広い。中等部からの持ち上がり、金持ち、会社の後継ぎ、一流を目指す野心家、その他才能のある者を片っ端から詰め込むために、高校は高校らしからぬ広さだ。
正門まではランニング。
息を切らしながら、木々の間から正門を覗く。無駄に装飾された無駄に金のかかる素晴らしい正門である。
生徒は学内の寮を使っているので、この門が開くのは来賓が来るときくらいだ。だから、無駄なの。
「転校生!転校生!胸踊り、俺の心がたぎるっ!」
「お前の周りだけ、気温が8月くらいに感じるわ」
サクは燃えている。
くそ暑苦しいぜ。
「副会長来襲!展開が早くて助かるぜ!」
「ちょ、テメエ、声量を下げろ」
黒髪サラサラ、銀フレームの眼鏡、制服をきっちりと着こなし、生徒会を裏から支える優等生。湿生園(しっせいえん)先輩である。二次元だったら、受けと見せ掛けて攻め。敬語で卑猥な言葉をがつがつ言っていただけると有り難い。
「俺、あの人に冷たい目でなじられたい……」
「今から走って抱きついてくればいいと思うぜ」
サクに提案してやったが、首を振った。
「今は王道転校生と腹黒副会長の絡みを見るっ」
そうかい。
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