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騒がしい教室。静寂に慣れてしまった私の耳には、あまりにも耳障りだった。
席に着くと、またもやあの男が私に話しかけた。
須藤 武
この男の名だ。私に声をかける人間は珍しくはない、ただそれは私をからかっているだけだ。
でも須藤武は違った。私を1人の人間として話しかけてくれた。
でも…
私にはそれが腹立たしくて仕方なかった。うるさい。
うるさい…
「おはよ、本郷さん」
須藤が私の名を呼んだ。
本郷 春
これが私の名だ。
須藤は私の前の席に座った。
椅子に体を逆にして座り、背もたれに手を置いて私に話した。
「なんでいつも暗そうな顔をしているの?こんな素晴らしい人生の中で」
須藤はニコッと笑い、その笑顔を私は直視することが出来なかった。
「本郷さん、たった一度の人生、後悔なんてしたくないでしょ?だから笑って?」
「…なら私の人生は…後悔ばかりね‥」
初めて須藤と会話をした。ただ私は窓の燦々とした景色を見ていたが。
「良かった。」
「なにが‥良かったの?」
「だって後悔したことがあるなら、やりたいことがあったってことでしょ?てっきり本郷さん、何も考えずに生きてるのかなぁ?って思ってたから」
「あなたが後悔したことと、私が後悔したことは…きっと1つも類似しないわよ…?」
私は睨みつけるようにして須藤を見つめた。
しかし、須藤は相も変わらず、ただ笑顔を私に見せるだけだった。
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