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とんだ軟弱な奴だ。何故、何も知らない‥何故…何も知ろうとしない。
私のことを知ろうとしても、たとえ知ったとしても‥私を助けることなど出来ない。
「よいしょ、ここが本郷さんの特等席?」
「須藤、お前…」
須藤は輝かしい顔で私の隣に座った。
「さてと、聞こうか、本郷さんの人生を」
何故…
笑っている。
そんな笑顔を見せられたら、死に切れ無いじゃないか…
「わ、私の人生は‥」
こんな奴に、私の人生を知って欲しくない‥こんな奴だからこそ、私など元からいなかったように明日を過ごして欲しい‥
でも私の口が動くのは何故だ…
「私は、死体とか殺人に興味を持った女よ!悪い…?だって、分からないけど、理解出来るものがあるのよ…」
やはり、こんな女…思ったとおりだ。須藤は、私から顔を逸らして、何も言ってくれない‥
「ほら見なよ!だから言ったでしょ?楽しい気分になれないでしょ?聞かなきゃ良かったでしょ!?これ見なよ、なんの痕かあなたに分かる?」
私は逸らした須藤の顔に、手首を見せつけた。
生きるために傷つけた、私の手首を‥
「はっはっは、やっと話してくれた。そんなことかよ?そんなことじゃ俺の人生を退屈させることなんか出来ないぜ?」
驚くことに、須藤はまた笑った。
私の心の先を知っても尚、私に変わらぬ笑顔を見せた。
「須藤、あなたなんで?なんで笑ってるのよ…私、人を殺したんだよ?頭の中でも現実でも、あなただって殺したわ!」
「楽しいかい?」
「え…?」
何故、顔色一つ変わらない
「人を殺して、楽しいのかい?手首を切って楽しい?」
何故、笑っている
「そんなこと、楽しそうじゃないなぁ‥でもまだ体験したこと無いからなぁ‥」
何故、こんな私と話している
「ねぇ?どうなの?楽しいの?」
何故、私は…
この男に惚れている
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