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「ねぇ?本郷さん?」
私の顔を見るな‥私を戸惑わせるな‥
「楽しく‥無い…でもこうしないと私は生きていけない、こうしないと私は私で無くなるのよ!!」
消えろ
「私は、私の人生は、胸を張って語れるものじゃ無いのよ!!」
消えろ!!
私は制服からナイフを取り出した。
私が唯一惚れた男、その男に私はナイフを突き立てた。
「死んでよ!私が生きていくために、死んでよ!」
私はナイフを振りかざした。
フェンスの上、何故かそこから落ちないように、がっちりとフェンスを掴んで。
「俺の人生、楽しかった!」
私はその一言でナイフを振り下ろせ無かった。
また、笑っている。
消えろ‥消えろ
何度消そうとしても消えない。
何度私から離れさせようとしても、私に近づいてくる。
「なんでよ…?なんで、笑ってるのよ!なんで、防ごうとしないのよ!!」
「だって、防ごうとしたら、本郷さんが落ちちゃうでしょ?」
嘘だ
偽りだ
こんな人間、いるはず無い…
「ほら、楽しくない。ここから降りようよ、もっと楽しいこと教えてあげるよ?」
「楽しい…こと?」
「そう、きっと本郷さんも、楽しいと思えるはずだよ」
私の手から力が抜けた。
手に握られていたナイフは、屋上から真っ逆さまに落ち、砕け散った。
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