勝負強さ 第一部:陸奥の獅子

隙間を見つける姿勢

「・・・少し硬いな」

目の前で打つ若手に対して、純粋な感想を呟く。
本間監督には、今キャンプ中に、もし何か若いのに対して思うことあったら何でも言っていいと言われている。スラッガーが足らないファルコンズには、オレの経験が貴重だからということらしい。

「・・・」

しかし、正直簡単にこちらからアドバイスを身振り手振り行うなんて気は起きなかった、自分で気づくという経験は貴重だというのがオレの持論だからだ。
人から言われたアドバイスは、時間が立てば忘れてしまうし、思い出すことはなかなかない。定着するまで、アドバイスされ続けなければならなくなる。
しかし、一度自分で発見したことは、忘れてしまっても、直ぐに思い出すことが可能だ。
かつては、ガキ大将だの、力だけで技術はないだの言われてきたオレでも、いや技術がなかったオレだからこその持論なのである。

だから、若手にこちら側からアドバイスを送ってやろうなんて思っていなかったのだが。