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内野手の頭を越す打球という東雲の答えに、俺はもったいなさを感じた。
さっきのバッティング練習で見て思ったことは、コイツは背丈の割に打球がまだ弱い。
勿論、硬さはあったのだろう。だが、それを加味して、コイツの球を捉える力は優秀だと感じた。リストの使い方が上手いのだろう。だから、多少ミスショットしても、もしくは振りが小さくなっても、中距離打者としては゛最低限レベル゛の速度、飛距離の打球が飛んでいく。
だが、この上背があればもっと飛ばせるはずだ。
「じゃあ、どういうバッターになりたいんだ?」
おそらく、このセンスがあるおかげで、内野を越える程度の打球を打つのにあまり苦労をしてこなかったのだろう。恐らく、フォアザチームの意識が強すぎるんだ。だから、いつからなのかは分からないが、ミスを無くすために振りが小さくなってしまったのだろう。
・・・もったいない。
「そうですね。チームに貢献できる、アベレージヒッターになりたいです。追い込まれてからでも、コンスタントにヒットを打てるような。」
この東雲という青年はデカい体をしておきながら、随分と健気な答えを返してきた。
「・・・そうか。
せっかくの一軍のチャンスなんだから、もっとリラックスしてやれよ。力が発揮出来ませんでしたなんて、もったいないからな。」
俺は本音を喉元で止め、そう言った。
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