隙間を見つける姿勢

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コーチ業界、っていうのも難しいもんなんだろうな。 若々しいエネルギッシュな背中が、俺にそう思わせる。 この日本野球界の門戸を叩いてから、おおよそ20年が経った。その中で培った経験というものは、我ながらにして財産であると断言できる。そして、学んだことの一つを挙げるならば、゛ホンモノ゛は自分の持ち味を知り、または生かすことを知っている者であるということだ。 野球業界というものはとても厳しい世界である。 アマチュア時代から切磋琢磨の荒波があり、そして勝ち残ってきた者のみしかいないのがプロの世界だ。他の奴にでも出来ることをしてたって、成功することはできない。 だが、あくまでも成長はその方向に進むという決意のある者にしか起きないのだ。 他人に言われてやることはもはや努力とは言えない世界なのだ。本人の意志で進みたいと思わねば、成長は出来ない。 俺はもう一度、東雲の背中を見る。 俺が教えたいことと、そいつの目指すところが違えば、無理に指導なんてすべきでない。まして俺は指導者ではないしな。にしても、もったいない奴だ。自分の持つ本当の能力に気づいてもなければ、俺からの滅多にない手解きの機会もまた逃してしまうなんてな。 ・・・うむ、もったいない。
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