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そうして質疑応答を繰り返すうちに、ワシは段々負けん気に火がついてきた。
この質疑応答の中で、ワシはやや厳しい評価を口にしている。それには、ワシの選手達には簡単に満足せず、常に゛もっと上に、もっと上に゛と向上心を持っていて欲しいという意味があるのだが、このまま未熟でもの足らないチームと認識されるのもそれはそれで面白くないと思った。
「ただこのチームは見とって、期待感を持たせてくれる若いのが多いわ。」
少し含み笑みを浮かべるようにして、ワシは言った。
「と言いますと?」
赤西は、ここはポイントか?というような目の色で、聞き返してきた。
「ワシはこれで監督として所属した球団としては3つ目になるが、良くも悪くもこんなに特色と言える特色が少ないチームも珍しい。個々の技術にも、チームとしても癖が殆どない。総合力ではやや周りに劣るチームかもわからんけども、伸びしろを考えたら十分やれるんとちゃうか。」
赤西も何かこの答えに思うところがあったようである。既に練習風景を見て、感じたところがあったのであろう。
赤西のペンはメモ帳の上で、爽快に走っていた。
「・・・なるほど、分かりました。」
はい、ひとまずここまでで切ります
と現場スタッフのディレクターらしき兄ちゃんが言った。
それにより、赤西も少し肩の力が抜けたような表情を見せる。
まあ、当然だろう。どんなにインタビューする姿が板についていようと、まだこの仕事を始めてすぐなハズだ。慣れないところも多かろう。
「本間監督、お変わりなさいませんね。」
赤西はカメラの前に立つ、インタビュアーとしての面を剥がし、無垢というのが似つかわしい顔で、かつての指揮官に素直な感想を告げた。
「実際、赤西はどう思う?このファルコンズというチームを。」
ワシもまた一人の監督という仮面を取り除き、素直にそう聞き返してきた。
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