隙間を見つける姿勢

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「ぐわぁー、疲れた。」 練習から帰ってくるなり、とりあえず、北山さんはベッドに倒れ込んだ。 昨日突然言い渡された昇格に伴い、俺たちは一軍キャンプの宿舎に移動した。そして、俺は同じく昇格した北山さんと同じ部屋に割り振られたのである。 「お疲れさまです。」 「あぁー、ほんと、練習自体は同じだとしても、周りが上手い分のプレッシャーがあるから、すげー疲れた。もちろん、内容が濃くなってたり、レベルアップしてるものも多いし。」 やはり投手の方も、レベルが高い練習らしい。 二軍では一年通して試合に出れるような基礎的な身体能力を向上させる練習や、みっちりとしたしつこい基礎技術の練習が大方であった。それが一軍となると、球を速くするため、打撃時の軸をぶれさせないための体幹トレーニングなど個々の選手の武器を伸ばすためのトレーニングや、二軍での基礎技術練習にいくつかの難しい課題を上乗せされた練習が中心となる。 勝手の違い、今日が練習では初見となるコーチや監督からの視線、周りの高いレベルなどもあり、俺も相当疲れた。 「よし、東雲!風呂行くぞ!」 いつ間にか北山さんは大浴場へ行く準備をすべて済ませていた。この人は何時でも立ち直りが早いというか、回復が早いというか、とにかく元気だ。 「はやっ。北山さん、ちょっと待ってくださいよ。」 「早くいこうぜ、俺明日は早い内に練習場入りしたいしな。」 「めっちゃ元気ですね、さっき疲れたーって言ってたのに。」
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