隙間を見つける姿勢

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カランと静かに置かれたバットと、一塁に向かってゆっくり走り出すバッター。 俺を向かい入れるバッターボックスは些か小さいように感じた。これは良いときの兆候である。 場面は両チーム得点なし、四回1アウト1、3塁。展開としては、この回紅チーム2番から始まってツーベース、進塁打、フォアボールときて、俺の打席。マウンドはこの回から登板している、二年目の高卒投手、笹岡。 俺はバットを天に突き刺す形で構えを取った。 細かく分析すれば、今年初の実戦登板で浮き足立っていたところ、初球甘く入った外角気味ストレートを、打ち気のバッターに打たれツーベース。そこから、球がバラつき、続くこれまた打ち気だった右打者が内角ボール球に手を出し、右方向の進塁打となったものの、球のバラつきが収まらずに、フォアボールとなった形だ。得意のスライダーは曲がりが大きいが、曲がり始めも早くコントロールがまちまちで、ストライクはほぼない。 とりあえず、待球しよう。 ここから、ストレートが外角にボール、変化球が高めに抜けボールとなる。
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