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「じゃあな、友生(ともき)っ」
「おうっ」
今日で、1学期が終わった。
クラスメートが、嬉しそうな顔をして次々と教室から出ていく。
俺は椅子にもたれかかり、思いっきり伸びをした。
「とっもきっ!」
「っ!」
突然椅子をひっくり返されそうになり、俺は慌てて机に手をかけてバランスを取る。
「へっへっへ、ビビったか?」
声のする方を振り返ると、幼馴染みの滝 貴隆(たき きりゅう)が、してやったり顔で俺の横に立っていた。クラスは全然違うが、家は近所なのでいつも一緒に帰っている。
「おまっ…俺を殺す気かっ!」
誰でも怒ると思う。
心臓が止まると思ったぞ、マジで。
「帰ろうぜ。明日から待ちに待った夏休みだ」
貴隆は話を逸らした。いつものことながらいきなりすぎる。
「…宿題も忘れんじゃねぇぞ」
何か仕返しをしたくて、俺はさらりと言った。その途端貴隆は固まり、がっくりと肩を落として暗い声で言った。
「…それを言うなよ友生、折角のいい気分が台無しだ」
「まぁ頑張れ」
俺は机の横に掛けていた鞄をかついだ。
「じゃあな!」
「またな友生!」
まだ教室に残っているやつらに声をかけ、まるで魂が抜けたみたいな状態の貴隆の袖を引っ張って教室を出た。
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