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荷物を玄関の脇に置いて、俺達は家の中を見回した。
家具と呼べるものが、何にもなかった。
屋根付きの家なのに、部屋の真ん中に囲炉裏がある。二階は吹き抜けになっていて、そこにある小さな窓から微かに光が漏れている。その光がちょうど囲炉裏に射していて、なんとなく幻想的だ。
「……よっこいせ」
斧を壁の出っ張りに掛けて、じいさんは玄関先に突っ立ったままの俺達に向き直った。
「まあ、まず座れ。」
囲炉裏の周りの円座を指し示して、自分もその内の一つに座った。
俺達は顔を見合わせると、おそるおそる、ゆっくりと座った。
「なんか、食うか?」
なんか…?
「なんかって?」
「干し魚か、干し肉しかないがなっ」
ガッハッハ、とじいさんは笑った。
保存食?
「じゃあ、お言葉に甘えて」
干し肉ください、と貴隆が言った。じいさんは愉快そうに笑った。
「おお!お前はよくわかってるじゃないか!!」
「ありがとうございまーす」
「それに比べてお前は…」
俺の顔を横目で見ると、じいさんは長いため息をついた。
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