6人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「おい、よそ見すんなよっ!」
「……」
目の端で貴隆を見る。
貴隆は肩をいからせ、顔を真っ赤にして、そして荒い息をしていた。
疲れた。こいつはもうほっとこう。
「おーい、どこ行ったじいさん」
「てっめ、無視する気か友生っ!」
「…まったく、いつまで喧嘩しとるんかと思ったら」
じいさんの声は頭上から聞こえた。
「二階?」
上を仰ぎ見ると、じいさんはしゃがんで下の俺達を眺めていた。
考えてみりゃ、じいさんが二階に上がってたのは当たり前か。二階に行くって言ってたんだから。
俺はゆっくりと立ち上がった。よろめいたがなんとかこらえる。
足がヒリヒリと痛い。やっぱ慣れない体勢は体に悪いな。
「別に、好きで喧嘩してたわけじゃねーよ。少なくとも俺は、な。」
「あ゙?」
…まだキレてんのか、こいつ。
上のじいさんを見上げて言った。
「なぁ。じいさんからもなんか言ってくれよ。こいつ全然俺の話聞かねぇの。」
「幼馴染みのお前さんの話を聞かないのに、どうして儂の話を聞くんじゃ?」
いや、聞かないだろーな。
「つか…それ、反語?」
「お、知っとったんか。」
じいさんが感心したように言った。
なんか、バカにされたよーな気がすんの、俺だけ?
「知ってるよ、そんくらい」
余談ではあるが、これでも俺の国語の成績はクラスでも上の方だ。
国語だけ、は。
最初のコメントを投稿しよう!