柚子裏市の『桃太郎』

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少年の腕が星屑に分解する。 分解して刀に再結合し、そのまま怪物の腹に斬りかかる。 まるで星屑が人間になったみたいだ。 ミルキーウェイとは『天の川』という意味だ。 天の川の化身ともいえる、凛とした少年は汚れなく力強く見えた。 少年の姿をもっとよく見ようとふらふらと立ち上がる。 記憶に留めておきたい…生きる力にしたい。 ひたすらにそう考えて、眼に姿を焼きつけようとする。 (彼らの制服、結(むすび)高校の…ここの生徒なんだ。) 意外と間近で見かける、思いがけない出会い。 理沙は胸が高鳴った。 さらさらの冷たく氷が張った川のような流れる髪の毛は、ひとつに束ねられ、青緑色の切れ目は針のように鋭く、理沙を畏怖させた。 白い肌…人間には見えないくらいに美しい。 人間嫌いな理沙だが、なぜか一目で心を奪われた。 理沙自身はごく普通の体型で髪の毛は薄いブラウン。 瞳の色も同色だ。 傷だらけの肌に仔犬のような愛くるしい表情。 唯一のおしゃれは頭で縛っている赤いリボン。 短いとも長いともいえない長さで硬いとはいえ、笑顔と相まって愛嬌がある。 少年少女たちは、見事に連携しながら、怪物を追い詰めていたのである。 巨大な怪物は、ものの5分もせずに倒れた。
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