雪の影

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「里沙ちゃーん、倉庫からダンボール箱二つ持って来てもらえる?」 「はーい!」 先週から、俺の両親が営む八百屋にバイトで入った女、永野里沙。 俺が学校から帰ると、いつもあいつの明るい声が店に響いている。 まぁ、母ちゃんの声の方がデカいけど。 「……ただいま」 店先からボソッと言うと、女二人が俺に気付いてこっちを向いた。 「あぁ巧、お帰り」 「あ、タクちゃんお帰りなさーい! 後でゲームの攻略教えて!」 …………。 だから“タクちゃん”は恥ずかしいからやめてくれと何度も……。 「ゴメン。俺ちょっと出掛けるわ」 「巧! アンタたまには店手伝いなさいよねー」 「まぁまぁ律子さん。高校生は遊んでナンボですよ。その分私が頑張りますから!」 正直、ちょっとムカついた。 里沙が俺を完全に子供扱いしているからだ。 「あーあ。里沙ちゃんは甘いねぇ」 無邪気に笑う里沙を見て、母ちゃんは呆れたように溜め息をつく。 「ふふ、タクちゃんカワイイですし。……あ、ダンボール取って来ますね!」
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