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あれ程、堅牢に思えた人型戦車の右腕が肘から引き千切られており、その箇所から黒い血を思わせるオイルが滴り落ちている。
「えッ?」
男が驚く中、再び空気を裂く音が聞こえたかと思うと、今度は人型戦車の左腕が破壊された。
男は何が起こったか辺りを見渡すと、こちらへ向かい猛然と走って来る銀色のボディーアーマーに身を包む人影が見えた。
「女?」
「そこから離れてッ」
見る見るこちらへ近付いてくる姿は女であり、その女の怒声に近い声に促された男は、手近な建物の影から、見慣れないライフルを持った女が人型戦車へ戦いを挑むのを、半ば呆然と見つめていた。
両腕を破壊された人型戦車であったが、他の武装は健在であり、戦車部の先端に据え付けられている機銃が左右に数回動いた後女をロックし、機銃が火を吹いた。
「ドッドッドッ・・・」
腹に響く低音と共に吐き出される弾丸の嵐。
しかし、その弾道上に女の姿は無い。
「!?」
女は建物の壁を蹴り、空中へトリッキーに飛び上がると同時に再びライフルの引き金を弾いた。
「バシュッ・・・」
と空を切り裂く、今まで聞いた事が無い銃声が数回発生したかと思うと、今度は人型戦車の頭部へ直撃し、いとも容易く人型戦車の頭部を破壊していた。
「あのライフル・・・どういう威力だ?」
男はただ驚いていたが、女が攻撃の手を緩める事は無かった。
女のライフルの攻撃で破壊された人型戦車は、人型からただの歪な戦車へと変わり果てている。
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