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その時。
またも短いアラートがコクピットに鳴り響き、サブディスプレイには被弾箇所が表示された。
「後ろから?
また奴らか・・・」
ポチの装甲内に装備されている、接触圧力センサーが作動した訳であるが、何の異常表示も示されていないという事は、人間でいう所のかすり傷程度の微少なダメージである。
レビンがバックモニターを確認すると、5人の男達がポチの背部にアサルトライフルをぶっ放しながら近付いて来る映像が映った。
「ちッ・・・逃げればいいのによッ!」
レビンは舌打ちしながら、火器管制パネルを操作し、戦車部の後方に据え付けられている対人用機銃を発射した。
戦車部後方のカメラが敵の姿を自動認識し、後は勝手に射角内の敵を掃討してくれる。
「ぎいゃあああッ!」
男達の断末魔がコクピットに届く事も無く、レビンは曇った表情でその光景をじっと見つめていた。
「こちらタートル。
モーガン中尉聞こえますか?」
トムの声がレビンを現実に引き戻した。
「ああ・・・スマン。
今からすぐ救援に向かう」
レビンが再び操縦桿に手を伸ばす中
「その必要は無いですよ。
何とか敵は撃退出来ましたから」
トムの声に促される様に周辺を確認すると、確かに敵の姿は辺りには見受けられ無かった。
「了解・・・。
今より警戒体制に移行する」
レビンはトムに答えた後、ヘルメットのバイザーを開けて新鮮な空気を吸い込んで、深呼吸をして軽くザワつく心を落ち着かせた。
「こちらボブ、ポチ聞こえるか?」
ボブの通信に答えるレビンの声は乾いていた。
「ああ。
大丈夫だったか?」
「仲間が数人殺られたが。
全滅は免れたな・・・
お前達VMT隊のおかげだよ」
レビンがディスプレイに目をやると、ボブがライフルを頭上に掲げてこちらへ合図する姿が映っていた。
「これが戦場か・・・」
緒戦の勝利よりも、VMT相手に特攻じみた攻撃を行い全滅した敵を動かす物は何なのか?
無造作に転がる死体を見つめながら、レビンはぼんやりと考えていた。
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