Chapter 03 交錯

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【数日後 アメリカ・アリゾナ州】 荒涼とした大地の中にサボテンが自生しており、その光景は砂漠を思わせ、西部開拓時代を彷彿とさせる。 そんな風景の世界を真っ二つに割るかの様に、どこまでも真っ直ぐに続く道路を一台のバイクが疾走していた。 灼熱の太陽が焼く路上を走るハーレーに跨がる人影は、革製のライダースジャケットを身に纏い、またヘルメットで顔が隠れているが、高速走行で風を受けながら走っている限り暑さは問題にならない。 そして、ライダースジャケットの身体のラインは細身で、胸部の膨らみは女性である事が窺えた。 ゴツゴツした岩肌を見せる山を遠くに見つめながら、更にバイクのスロットルを加速させたのは、幽霊部隊の本部へ向かうリイサであった。 「ここの景色も久しぶりね」 全体的に荒涼とした風景のアリゾナの地は、自然に対して畏敬の念を抱かせる様で、リイサはこの場所が好きだった。 グランドキャニオンやバリンジャークレーター等々、地球や宇宙の神秘を感じさせる場所も多い。 そんな都市の喧騒から遠く離れたこの場所は、幽霊部隊の本部を置くにはうってつけでもあり、アメリカ政府がこの土地の大半を取得している事も、ここに幽霊部隊の本部が設立された理由である。 「本部に戻ってから、次の指令までの時間が空けばいいのに・・・」 そう思わせる程に、信号も無く真っ直ぐ続く道は、ただひたすらに気持ち良かった。 後10キロ程走れば本部へ辿り着ける距離まで近付いていた。 「取り敢えず帰ろう」 幼い頃の記憶が欠落しているリイサにとって、気付いた時に自分が居た本部は家の様な物で、隊長のカスケードを始めとした古株の隊員は家族みたいな物である。 風と一体化した様なツーリングを楽しみたい気持ちと、早く仲間に会いたい気持ちの差に、ヘルメットの中のリイサの表情には苦笑が浮かんでいた。
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