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それから数十分後。
リイサが駆るハーレーは、荒野の中にフェンスで囲まれた一角に辿り着いていた。
工業系のプラントを思わせる、だだっ広い敷地には数棟の建物が並ぶが、だだっ広い敷地の割合に対しては建物は少ない。
敷地の入口の門には。
CAUTION《警告》から始まる警告書きが貼られており、アメリカ軍の所有地であり、許可無く侵入する事は禁止されております。
警告に従わ無い場合には発砲も有り得ます。
と結ばれ、ここが民間の施設では無いと明記されていた。
この殺風景な場所が幽霊部隊の本部であり、またリイサにとっては家であった。
リイサは守衛が立つ門の前でバイクを停めて、守衛の元へゆっくりと歩いて行く。
「認識番号 YDA-605Z6QO8569。
認証コード STAB DAGGER。
リイサ・フォレスト」
肩からアサルトライフルをぶら下げた守衛に、リイサがいつもの様に告げると、守衛もいつもの様に手にした端末にリイサが告げたコードを入力していく。
「ピピッ・・・」
と端末から短い電子音が発生し、リイサの告げたコードが認証された。
「どうぞ、こちらへ」
守衛は簡潔に告げると、守衛室の脇にある網膜認証装置へリイサを促した。
「ええ」
リイサは守衛に軽く笑いかけ、網膜認証装置の網膜を読み取る部分に瞳を近付けた。
1秒もかからずに登録された網膜パターンと、リイサの網膜が一致した事を知らせる、装置上部のランプが緑色に点灯した。
「お疲れ様でした」
「ええ。
規則とは言え、毎度毎度めんどくさいわね。
私は私でしか無いんだけど」
「一応、規則ですからね」
苦笑を浮かべるリイサへ、守衛もバツ悪そうな顔を浮かべている。
「そうだね。
でも、そのお蔭で私達の本部が守られてる訳だしね」
リイサは再びハーレーへ跨がり、エンジンを作動させながら守衛に答えた。
「ともあれ。お帰りなさい」
守衛が軽く笑みを浮かべながら敬礼を行い、リイサも軽く答礼を返した。
そしてハーレーを建物の駐車場へ向け走らせた。
敷地内なので、ヘルメットを被る必要も無く、打ち寄せる風にリイサのピンクの髪は無造作に靡いていた。
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