Chapter 03 交錯

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それから数十分後。 リイサが駆るハーレーは、荒野の中にフェンスで囲まれた一角に辿り着いていた。 工業系のプラントを思わせる、だだっ広い敷地には数棟の建物が並ぶが、だだっ広い敷地の割合に対しては建物は少ない。 敷地の入口の門には。 CAUTION《警告》から始まる警告書きが貼られており、アメリカ軍の所有地であり、許可無く侵入する事は禁止されております。 警告に従わ無い場合には発砲も有り得ます。 と結ばれ、ここが民間の施設では無いと明記されていた。 この殺風景な場所が幽霊部隊の本部であり、またリイサにとっては家であった。 リイサは守衛が立つ門の前でバイクを停めて、守衛の元へゆっくりと歩いて行く。 「認識番号 YDA-605Z6QO8569。 認証コード STAB DAGGER。 リイサ・フォレスト」 肩からアサルトライフルをぶら下げた守衛に、リイサがいつもの様に告げると、守衛もいつもの様に手にした端末にリイサが告げたコードを入力していく。 「ピピッ・・・」 と端末から短い電子音が発生し、リイサの告げたコードが認証された。 「どうぞ、こちらへ」 守衛は簡潔に告げると、守衛室の脇にある網膜認証装置へリイサを促した。 「ええ」 リイサは守衛に軽く笑いかけ、網膜認証装置の網膜を読み取る部分に瞳を近付けた。 1秒もかからずに登録された網膜パターンと、リイサの網膜が一致した事を知らせる、装置上部のランプが緑色に点灯した。 「お疲れ様でした」 「ええ。 規則とは言え、毎度毎度めんどくさいわね。 私は私でしか無いんだけど」 「一応、規則ですからね」 苦笑を浮かべるリイサへ、守衛もバツ悪そうな顔を浮かべている。 「そうだね。 でも、そのお蔭で私達の本部が守られてる訳だしね」 リイサは再びハーレーへ跨がり、エンジンを作動させながら守衛に答えた。 「ともあれ。お帰りなさい」 守衛が軽く笑みを浮かべながら敬礼を行い、リイサも軽く答礼を返した。 そしてハーレーを建物の駐車場へ向け走らせた。 敷地内なので、ヘルメットを被る必要も無く、打ち寄せる風にリイサのピンクの髪は無造作に靡いていた。
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