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程なく、麻理亜を乗せたジャンボジェット機は、ケネディ空港へと降り立ち、手荷物を手にした麻理亜は、空港の入口へと向かいながら携帯を取り出してゲイリーへと電話を掛けた。
数秒で通話は繋がり、受話器からは聞き慣れた、ゲイリーの艶のある低い声が聞こえてくる。
「マリアか。
無事に着いたみたいだな」
「ええ。無事にね。
それより荷物は届いてるんだよね」
「ああ。
しかし、こないだも言ったと思うが・・・
一人で大丈夫なのか?
俺がそっちに行ってもいいんだぞ?」
年と共に親バカ度を増して行くゲイリーの言葉に、麻理亜は嬉し気な表情を浮かべた。
「パパ・・・
こないだ話した様に、いつもの仕事と違うから大丈夫だよ。
それよりも、パパの仕事は大丈夫なの?」
仕事とはミッションの隠語である。
「俺の方は大丈夫だ。
ただ、お得意さん(USOC)が出張(軍事目的の移動)に出ると言う事らしい」
「そうなんだ・・・
お得意さんも最近忙しいわね。
私担当のお客さんも似たり寄ったりかもね」
USOCがウクライナから移動すると言う事は、まだ全容が掴めていないWISE31の作戦の一環である事は、まず間違い無かった。
「だからこそ、マリア一人でビジネスが大丈夫なのか、心配にもなる訳だ・・・」
6年振りにゲイリーと再開してからというもの、ゲイリーの親バカ振りはどんどん上昇していた。
そして。
麻理亜にはそれが可笑しくもあり、また嬉しくもあるのである。
「心配しないで。
今までの仕事は、それなりにこなして来たつもりよ?
そんな事よりも、パパに知らせたい事があるんだけど・・・
いいかな?」
「ん?
何だ、知らせたい事って?」
普段の電話では、要点だけ話して通話を終える麻理亜の意外な言葉に、受話器の向こうのゲイリーは多少驚いている様子である。
「実は・・・
この一連の仕事が終わったら
私、結婚する事に決めたんだ」
麻理亜が告げた結婚と言う言葉にゲイリーは暫し沈黙していた。
「・・・・・・・・」
「パパ・・・聞いてる?」
「あ・・・ああ。
というより・・・
結婚するってんなら、NY行き取り消しだ!
何で、そんな大事な事を・・・
NYに着いてから言うかな?」
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