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「モーガン中尉。
こんな所で何してるんですか?」
不意に声を掛けられたレビンが声の方を振り返ると、声の主はオペレーターのミリアであった。
「野郎二人で、むさ苦しく月を眺めてるだけさ。
ミリアこそどうしたんだ?
こんな夜更けに一人で」
「何か・・・眠れなくて。
外の風を浴びようかな?って感じです」
いつもの軍服姿では無く、Tシャツとハーフパンツ姿のミリアは、淡い月の光に照らされている事もあり元々細身の身体も相まって、儚気にレビンには映っていた。
「おいおい。誰だよ。この可愛い娘は?」
ボブはレビンとニヤリと笑いつつも、妙な気を回したかの様にこの場から立ち去ろうと立ち上がった。
「彼女はミリア・ハーディング。
VMT隊のオペレーターだ。
んで、この男はボブ・マーディラス」
レビンが簡単に互いの紹介を行うと、互いに手を差し出して握手を交わす。
「今回はお疲れ様でした。
そして、亡くなられた戦友の方・・・
私がもっとしっかりしてれば・・・」
泣き出しそうな表情を浮かべるミリアへ、安心させるかの様にボブは笑顔を浮かべる。
「君のせいじゃ無いよ。
レビンにも言った事だけど、VMT隊が居てくれたお蔭で俺達の被害は最少で済んだのだから」
「はい・・・」
「そして俺達歩兵隊は、死ぬ事は珍しい事じゃ無いからさ。
君が気にするまでの事じゃ無いから」
ボブはミリアを安心させるかの様に優しく告げた後、レビンへ向き直り敬礼を行った。
互いの無事を祈るかの様に。
生きて再び再会出来る事を願うかの様に。
「死ぬなよ?」
「お互いにな」
万感の想いを短い言葉に変えて、互いに敬礼を終えた後、ボブは兵舎の方へ戻って行った。
レビンとミリアは、ただ静かにボブの背中を見つめている。
勇敢な兵士であり、だけども優しさを見失う事の無い男の影は、程なく闇に溶けていった。
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