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パーティー会場を抜けた麻理亜は小走りでショーンの行方を追う。
「爆発場所は上の階だッ。急げ」
カモネギーホールのスタッフらしき数人が、麻理亜の側を猛然と走り去って好く。
「上階で爆発か・・・」
爆発の割には損害が少なすぎたので、陽動の可能性も考えられるし事故の可能性も浮上してくる。
爆発現場を見れば、麻理亜にはある程度の推測が付くのだが、今はショーンを探す方が先である。
程なくエレベーターの前へと着いたが、先程の爆発の影響でエレベーターは使用不能となっており、麻理亜は近くにある階段へ向かった。
「さてと。
上に向かうべきか。
下に降りるべきか・・・」
爆発後直ぐにエレベーターが止まったとすれば、ショーンはこの階段を通る以外に道は無い。
唐突に消えたショーンの動機など解る筈も無い麻理亜は、階段の前で腕を組み予測を行う。
「もし・・・
ショーンが爆発に関連してるなら。
現場である上階へ向かうよりも、下に向かいフロントから表に出て人混みに紛れる可能性が高い・・・」
麻理亜が思考を研ぎ澄ます中、下階からこのフロアに向かって来る者が居た。
「お客様・・・大丈夫ですか」
麻理亜がふと顔を上げると、中年の男が心配そうな表情を浮かべていた。
ポケットに着いてる名札の役職には。
Grand Managerと記されており、この男がこのホールの支配人という事である。
「会場でシャンデリアの下敷きになった人は何人か居るけどね。
私は大丈夫だわ」
「それは・・・大変だ」
支配人が悲痛な溜息を漏らす中、麻理亜はふと試みにショーンの行方を尋ねてみた。
「あなたがここに来る途中。
ダレス財団のショーン・ダレスを見かけ無かったかしら?」
支配人はハッとした表情を浮かべ、何か思い出したかの様に麻理亜の問いに答え始める。
「はい。
こちらへ向かう途中ショーン様とすれ違いました。
何かお急ぎの様子で、お連れの方とご一緒でした」
と言う支配人の声に麻理亜の瞳はカッと見開き、澄み渡る冷たい光が煌めいた。
「お連れ様って?」
麻理亜の勢いに押されるかの様に支配人は、しどろもどろに答え始める。
「ピ・・・ピンクの髪の、き・・・綺麗な女性とご一緒でした」
「ありがとう」
麻理亜は支配人に礼を述べるとヒールを脱ぎ捨て、10段程ある階段を飛び降りた。
「ピンクの髪の女性?
一体何者なの?」
猛然と階下へ向かう胸中に様々な疑念が浮かぶが、麻理亜の猛烈な勢いは止まる事は無かった。
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