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黒い星が空を駆ける。やがて小さかった地表がだんだんと大きく見え始め、宮殿の近くに降り立つ。星からゆっくりと、そして優雅に星から地面に歩きよる。
そして門番の兵に近づきこう言った。
「無理を承知で頼むのだが、皇帝に謁見をさせて欲しいんだ」
黒い服を身にまとい、腰には剣をさしている。髪の毛までも真っ黒。それが俺のいつもの服装だ。
今宵は月明かりもなくいつもより暗闇が濃い。そのためか景色に溶け込んでいるように見える。
「ダメだダメだ。明日の朝に出直してくれ。だいたい今は何時だと思っているんだ」
宮殿への入り口を守る門番は当たり前のように俺の問いに答える。
やはりダメか。それなら仕方がない。少し荒い手で行かせてもらおう。悪く思わないでくれよ。
「そうか……。じゃあ君達にもう用はない。少し眠っていてくれ」
薄く微笑むと身体の周辺に魔力を発生させ、にぶく光る黒い魔力が門番を覆う。
「なっ!? 貴様何を……」
体から力が抜け、ばたりと倒れてしまう。辺りから兵の気配は感じない。静寂が世界を支配しているようだ。
「さて、それでは皇帝様に会いに行くとしますか」
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