アリスの井戸

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蟻、アタシのあだ名、亜梨栖(アリス)はアタシに似合わないからって。 『アンタなんか蟻で十分じゃない』 ここではアタシの存在価値は蟻ほどの大きさでしかない。 転ばされ、頭を踏みつけられ、惨めに泣く姿。 アタシにとっても、アタシの存在価値が蟻以外に思えた。 頭上から降ってくる沢山の嘲る声で脳内が一杯になる。 女子のイジメはとても醜い。 アタシは思考を停止させ、現状からせめて心だけでも逃がす。 ずっと続いたイジメの中で身につけた唯一の防御法だった。 こうすれば声も聞こえなくなる、痛みもなくなる。 アタシはアタシの殻の中に潜り込むだけ、それだけで良いんだ。 今日も思考を遮断した。 その瞬間、ほんの少しできた思考の隙間にその声はするりと入り込んできた。 『アリス、腕を大きく背中側へ振り上げるんだ』
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