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『ボクはチェシャ猫ってんだ、ヨロシク』
にまーっと満面の笑みで握手を求めてくる。
『チェシャ猫…って、あだ名?よね』
おずおずと差し出された手を握る、ひんやりした柔らかい手だ。
ふいにぐっと引っ張られる。
視界一杯に彼の顔があり、瞳にアタシの顔が写って見える。
『なにするのよ!』
アタシは彼を突き飛ばし、壁際まで逃げる。
『惜しいねぇ、綺麗な髪なのに』
ケラケラとアタシの様子を楽しむ彼、理解できない。
『ま、少しづつ慣れてくれりゃ良いサ』
ボクはいつでもそばにいるよ、と言い残し去っていった。
アタシはぺたりと座り込み、早鐘のようになる心の臓をおさえる。
彼の顔が、声が、なにより瞳の色…カラコンだろうか、うっすら紫がかった瞳が頭から離れない。
逃げられた高揚感も喜びも、彼との数分で吹き飛んでしまった。
アタシ、ヤバい、かも。
ぼーっとした頭で戻った教室では、今まで以上の地獄が待っていた。
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