アリスの井戸

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教室に入ると、中にいた女子が一斉にこちらを見る。 敵意と、悪意と、暗い楽しみをそれぞれの瞳にたたえ。 アタシは硬直する。 その、極寒の視線群に絡め取られて身震いすらできない。 無言の時間が永遠に続くかのように思えた。 怖い。 『蟻がなんかこっち見てんだけどー』 『ムカつくー』 『蟻のくせに人間サマ見下したような目するなんて生意気ー』 あからさまな大声で男子達もこちらを見る。 『蟻ってアイツ?』 『蟻なら外に出さなきゃな』 『お前の私物はこっちだぞー』 ケラケラ笑いながらアタシの鞄を窓の外に逆さまに吊す。 中から教科書や筆箱がバラバラと落ち、空っぽになったところで鞄も落とされた。 アタシは走り出す。 鞄には財布も入ってる、盗られたら帰れない! 笑い声を背に受け、泣きながら拾いに行った。 下には彼…チェシャ猫がいた。
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