5月

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その人はこちらを向き 「優子ちゃん!」と言った。 「村瀬くん? なんでこんなところに!?」 そこに居たのは村瀬くんだった。 彼は制服姿だった。 学校が終わってからずっと ここで待っていたのだろうか。 「…あの、謝りたくて。 保健室のこと…」 彼は頬を掻きながら 俯き気味に言った。 「あ、あたしも… 突き飛ばしちゃって。 あたしが悪いのに」 「いや!男は女を守らなきゃいけないのに…怖い思いさせたし。ごめんな」 あたしが謝りたかったのに あたしより先に村瀬くんが 謝ってしまった。 なぜかそれが さらに申し訳なく思えた。 「良かったら…上がってく? お茶くらい飲んで行ってよ」 と言うと 村瀬くんは「うん」と答えた。
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