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夜中に、布越しにAliceの手を握る。
繊細で白く、汚れのない人間の肌。
ボクは何年触っていないのだろうか。
布越しでもわかる彼女の柔らかさは、ボクに人とのふれあいを思い出させた。
初恋の相手の声も、仲の良い友人の癖も、母の香りも…全て忘れた。
Aliceの手を握りしめる。
『寂しいの?』
Aliceは目を覚ましたようだ。
ボクの目をまっすぐに見つめ、哀れんでいるかのような優しい声で問う。
寂しく思うべきはおそらく世界で一人きりであろう最後の人間、Aliceの方だろうに。
『疲れただけだよ。』
布越しに彼女を抱きしめる。
『アタシも疲れたわ』
甘えるようにボクの胸に顔をすり寄せてくる。
Aliceはとても小さくて、今にも消えそうなほどに細く頼りない。
かといって女性らしいふっくらとした肌の柔らかさはしっかりと備えている。
『ねぇ、チェシャ猫さん。』
―アタシ、貴方を愛し続けれるかしら?―
初めて、Aliceの肌がボクに触れた。
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