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店主は悔いている。
どうせ正気を保っているのなら、なぜ店でなく家族を守らなんだか…と。
彼は感染者に襲われる家族よりも、今まさに壊されんとする店を守るために戦ったのだそうだ。
その結果、家族を養い守るための店が残り…家族は感染者として街にさまよい歩く存在となったのだ。
Aliceを見て、店主はいなくなった我が子を想う。
今はただ、植物でも良いから生きていて欲しいと願うばかりだと…心の底からの呟きを誰に言うでもなく彼は発した。
静かになった店が居心地悪くて、ボクは店の奥にある戸を開ける。
奥はめちゃくちゃに荒れていて、本当に店だけを守っているのだとわかる。
戸を閉めようとした瞬間、奥から緑色の長細いものが飛んできた。
『Alice、下がって!』
ボクは身を挺してAliceをかばい、正体不明の緑の物体をつかんだ。
それは、トゲの生えたツタだった。
店主がボクの横を走り抜け奥へと消えた。
暫く奥でガタガタと暴れる音が続いた。
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