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静寂は双子の歓声で破られる。
それを皮切りに部屋は混乱の色に埋め尽くされ、泣き叫ぶ者暴れる者発狂する者…皆様々に混乱の魔物に喰われていった。
アタシは一人、壁際で座ってその様子を眺める。
きっとこの中で一番冷静。
双子はまた歌を歌い始める。
止めようと駆けだしたひとりが、先程の水風船の音をたてて倒れる。
また一人、そのまた次ぎも。
近づいちゃいけないの、見てわからないのかしら。
それでも皆突撃していく。
飛んで火にいる夏の何とやら?
アタシはその間、双子の歌を聴いていた。
とても下手すぎて何の歌かわからなかったけど、歌詞をよく聴いてみればなんてことない。
アタシが小さい頃に何度も歌った遊戯歌だった。
―桑の木回って
そらくるり―
アタシはいつの間にか一緒に歌っていた、とても小さな声で。
どんどん少女は消えていき、残りのアリスはアタシ一人になった。
『これで最後だ』
『楽しもうじゃないか、最後のダンスを』
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