なぜそれがあったかなんて知らない。

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 ボクは急に、この物体が憎くなった。  真っ暗な部屋、スポットライトを浴びたように白く光る脚、光を反射してきらきら光るペディキュア。  気付くとボクは手に、出刃包丁を握り締めていた。  ざく ざく グチュ ペキ  半分残った肋骨、骨盤、背骨……無差別に打ち据え、破壊し、それでも脚だけは残した。  気が済むまで破壊し、台となった机も傷だらけだ。  最後に、母が使っていたのであろう残り少ない除光液を持ち出し、ソックスを脱がしてペディキュアを丁寧に消し去った。  甘皮付近に残ったもの木綿棒で丁寧に溶かし取り、除光液の成分で痛まぬようにすぐさまぬるま湯でつま先をぬぐった。  乾いたころに新しいソックスを履かせ、美しい女学生の脚は完璧な姿を取り戻したのだ。  なんと美しいのだろうか……。  ボクは食事も睡眠も忘れ、ずっとそれを眺めていた。  眺めるだけ。  触ったのはペディキュアをとったときだけ。  ずっと、眺めているだけ。
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