プロローグ

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暁子(あきこ)姉ちゃん。 母さんがやっていたピアノ教室の生徒さん。 元幼稚園の先生で、ピアノを練習し直して自分の子供たちに聞かせてあげたいのだと言っていた。 暁子姉ちゃんのピアノは優しくて、暖かくて。 母さんの優雅なピアノも好きだったけど、暁子姉ちゃんのピアノも好きだった。 しばらくして、暁子姉ちゃんは来なくなった。 俺が4,5歳のときだったはずだ。 その後も理由も分からない。 でも、「暁子姉ちゃんって呼んでね」と笑った顔だけは覚えている。 花が一気にほころんで、そこに日がさしたかんじだと 母さんが言っていたけど、全くその通りだと思う。 暁子姉ちゃんのことを、柿田正彦は知っているのか? そのことばかり式の間中、考えていた。
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