第二章

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間髪入れずに青い龍は動き出した。 「クソッ!」 九里は泣き止まない赤ん坊を抱いたまま走り出す。 「逃がすな蒼龍!紅龍、支援だ!」 炎を纏ったような燃え盛る赤い龍も九里を追う。 「ぐあっ」 青い龍の放つ複数の鋭利な氷のつぶてが、九里の背中に刺さる。 「強いだろ?式神と言ってね、使役するのがとっても難しいんだけど…それができるようになってしまえばとっても役に立つ。陰陽師の必需品だ。」 目の前で得意げに話すそんな説明も今の私の頭には入って来なかった。 傷つく九里が必死に赤ん坊を庇っている。 『姉貴の赤子なんだ』 赤い龍からは炎の粉が飛ぶ。 避けきれずに九里を直撃する。 丸まる九里の腕の中で、赤ちゃんはまだ泣き続ける。 やばいよ… このままじゃ… 「攻撃をやめて!」 私の言葉に目の前の人物は驚いたような顔をした。 「どうして?キミには関係ないでしょ?さっきだって断ってたじゃないか。妖怪に関わるのが嫌なんだろ?」 「でも…!こんなの間違ってる!」 「間違ってる? これが俺の仕事なんだよ。」 そう言い捨てるとその人は無邪気に笑って見せた。 「そして俺にはこれしか出来ないんだ」 最後に聞き取れるか取れないかくらいの小さな声でそう聞こえたような気がした。image=438250926.jpg
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