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このままでは九里は赤ん坊を庇い続けて死んでしまう。
妖怪にも死ぬという概念があるのかどうか私には分からないが絶滅寸前っていうのだから死と似たようなものはあるのだろう。
劉人もさっき"始末する"と言っていた。
「今すぐやめて下さい!」
「どうして?まさかキミ…」
妖怪の味方をするの?
耳元でそう呟かれてぞくりとした。
悪寒が頭からつま先まで一気に駆けぬける。
「そんなはず無いよね?この妖怪はキミたぶらかそうとしてるだけなんだ。うまく利用するためにね。だから情を移す必要なんてないんだよ?」
「いくら私を利用するためだけに近づいたのだとしてもそれは殺す理由になんてならない!
貴方は犯罪者と同じよ!!」
キッと思いっきり睨んでやったら一瞬驚いたような顔をしたけどその顔は直ぐにへらっと笑った。
「へぇー面白いねキミ…。じゃあどうする?俺を止める?無理だね。キミには何も出来ないだろ?」
この状況だしね
再び耳元で呟かれる。
その嫌悪感に鳥肌が立った。
先程から左手で肩をがっちりホールドされ身動きは取れない。
でも何も出来ない訳じゃない。
私は力一杯息を吸い込んだ。
そして
「何してんのよ妖怪!」
思いっきり言い放ってやった。
「子供のせいにしてやられてばっかりじゃない!子供1人守れないでそれでもあんた男なの?!」
二頭の龍はその大きな声に驚いたのか攻撃の手を止め、
その奥で言われた本人もポカンとしている。
私を拘束している人物も至極呆気に取られたような顔をした。
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