第二章

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他力本願? いえ違います。 これは"応援"というれっきとした作戦ですよ。 「俺には応援には聞こえなかったけど」 「何で人の心勝手に読んでるんですか!!」 にやにやと笑うこの男は依然として手の力を緩めようとはしない。 早くこの状況から抜け出したいのに…。 「なんだよ…でけぇ口叩いてると思えば…結局人任せかよ…」 急に口を開いた九里がふらっと立ち上がった。 私の大きな声にびっくりしたのか赤ん坊の泣き声は止まっている。 「ま、そのでけぇ口から出たでけぇ声のお陰で救われたな」 瞬間、私達の周りに無数の青い火の玉のような炎がゆらゆらと現れた。 それは外見に似合わずとても熱くて、近づく事さえままならない程だった。 「狐火…鬼火とも言う。俺たち九尾の得意技だ。」 「ぐっ…!」 青い炎が私を拘束する腕に襲いかかる。 あれだけ外れなかった手は熱さと痛みに耐え切れずすぐに外され自由になった私はすぐさま九里の元に走った。 「渡しなさい」 「何をだよ」 「その子!」 私が九里の腕の中を指差すと、九里はまた驚いたような顔をする。 「お前…」 「煩いわね!その子の泣き声聞いてるうちに母性本能が湧き上がって来ちゃったのよ!」 「何だよその訳わからねぇ理由」 あざ笑うように笑うそいつに私は両手を差し出す。 すると戸惑いながらもその手に子供をあずけた。 私の腕の中でくりくりした丸い目が私の顔を映し、笑った。 「絶対守るんでしょ?!」 「当然だ!!」 「私の事も守ってよね!」 「返事しかねる」 その言葉に納得いかなかったが今は言い争う時間は無いので2人一緒に陰陽師相手に身構えた。すぐに式神の龍が私達の前に立ちはだかる。 「成る程…妖怪の味方をするのか…。 馬鹿だね、キミも。」 青い龍が私達の元へ飛んで来る。 九里が私の前に出る。 私も腕に力を込めた。 迫ってくる青い龍… 水で出来ているかのような透けた身体の… ……あれ…?
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