第三章

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「はるなっていうんだ、可愛い響きの名前だね。よろしく、はるな。」 陰陽師との死闘(ちょっと大袈裟かもしれない)の後、私達は人目を避ける為に私の家まで戻った。 人目を避けるのは勿論私が独り言を喋ってる変質者だと他人に思われない様にするためだ。 「うん、よろしくね、瑠璃!」 私が笑いかけると瑠璃もニコッと笑う。 この笑顔が何とも可愛い。 見ているとなんだか癒される。 今現在も仏頂面な九里とは真逆の、まさに太陽みたいな人だなと思う。 「お前自分で言ってて恥ずかしくないのか?」 「勝手に心読まないでよ九里!」 「読んでねぇよ!気付いてねぇんだろうけどずっと声に出てたからな。」 「え…ええ?!」 「ふふ、面白いねはるな。」 「ち…違うのこれはえっと言葉のあやで…!」 私そんなに無意識に喋ってるものなのだろうか…なんか泣けてくる。 「だぁ」 落ち込んでる私を励ましたい…って訳ではないだろうが赤ちゃんが私の髪を小さな手で掴む。 「にしても瑠璃お前…どうして…」 「九里の事が心配になっただけだよ。まぁそれとは裏腹にもうお目当てのものは見つけたみたいだからいいけどね。」 そう言って私の方を見る。 お目当てというのは赤ちゃんの世話人の事なのだろう。 「…本当にそれだけか?」 納得いかないというように瑠璃に疑いの眼差しを向ける九里。 「…実を言うと俺の爺ちゃんも狐長さんに賛成派でね。」 「成る程…。実行に移すのは俺がうまくいってからって訳か。」 「そういうこと」 終始微笑んだままの瑠璃に「抜け目ねぇな」と九里はため息を漏らす。 「私は…どうすれば…」 やるとは言ってしまったものの正直何をどうすればいいのかも分からない。」 「お前はとりあえずそいつを世話すりゃいいんだ。俺がそれを守る。ただそれだけだ。」 「育てるってどのくらい?」 「人間で言う3歳くらいかな」 「3年間…?!」 瑠璃の言葉に驚愕した。 いや長いよ! てっきり一年くらいで解放されると思ってたのに!! 私今大学生だよ?!18歳だよ?! 20歳過ぎちゃうじゃん!! 「お前なんか勘違いしてねーか?」 思考回路がショートした私に九里が更に衝撃的な事実を告げる。 「妖怪は人間の何十倍も長生きなんだぞ?3年じゃまだ赤子のままだ。」 「え…?!」 「そうだね…70年くらいが妥当かな」 「70?!」
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