第三章

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「残念でした。私まだ未成年だからお酒は買えません。それに九里もまだ未成年でしょ?」 「あ?バカかお前。何で妖怪の俺が人間の法律なんか守らなきゃいけねぇんだよ。」 「さっきからバカバカうるさい!」 でも確かに納得はいく。 九里は妖怪。 人間みたいに見えても人間じゃない。 「それに俺は232歳だ」 「そう232歳………え?」 その言葉を理解した時、文字通り私はその場で固まりました。 「にひゃく?!」 「妖怪を人間と同じ物差しではかるんじゃねぇよ。本当にバカだな。」 またバカって言った…!! でも確かに瑠璃も同じようなこと言ってた気がする。 「じゃあ瑠璃も…?」 「あいつは俺より2歳年上だ」 「年上…!?」 「まぁ2年くらいじゃそんなに変わらねぇけどな」 ということは瑠璃は234歳という事になる。 俄かには信じ難い事だけど… 一連の事を見てきた私に信じないという選択肢は無かった。 でもやっぱり人間とは違うんだって事を思い知らされるというか… 「人間は直ぐに死ぬもんな」 「そ、そんな事言わないで!」 短命は短命なりに精一杯生きてるんだからね!! だからその短い人生を妖怪と関わっただけで終わらせたくないんだよな、なんて言っても絶対に聞いてはくれないだろうから言わないけどね! 地獄にだって行きたくないし!! 「二百年って事は戦争とかも見てきたって事?」 「あの頃は俺もまだガキだったからな…。だが空から爆弾が落ちてきて火が舞い上がってたのは見た。 人間は恐ろしい以上にバカだと思った。」 「さっきからバカバカ言い過ぎ…」 「人間は馬鹿だよ」 そうきっぱりと言い放つ九里の顔を見れなかった。 こればっかりは何も言い返せない。 変な事聞かなきゃよかった。 流れる沈黙。 カチカチと部屋の壁にかけてある比較的気に入っているシンプルなデザインの洒落た時計だけが音を紡いでいく。 返す言葉を無い頭で必死に考える私にその時間は短いようで長かった。 「茶ぐらいねぇのか?」 「え…お茶?」 突然紡がれた予想外な言葉に素っ頓狂な声が出た。 「喉が渇いた。酒じゃなくていいから持って来い。」 「何その上から目線…」 でもそれはきっと気まずい雰囲気を壊すために言ってくれたのだと思う。 それが例え私の勘違いだったのだとしても助かったのは事実だった。 悠助を九里に預け、再びキッチンに向かおうとした時だった。
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